みなさんはどんな大学生活をおくっていましたか?
私は結構地味で退屈な日々を過ごしていました。
本書を読むと、あなたは「こんなキャンパスライフを送りたかったなぁ」と必ず思うでしょう!2010年にアニメ化もされているいますね!こちらのクオリティもとても高いので、ぜひ観て欲しいです。
本書を購入したきっかけ
2020年4月に古本屋さんで購入しました。
正直な話、だいぶ前ににアニメは視聴済みです。当時は大学生でした。それゆえに登場人物達からたくさんエネルギーをもらったことを覚えています。
なぜ私がこの小説を読もうと思ったのか。
理由は同じく森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を読んだことがきっかけです。

文化庁メディア芸術祭大賞受賞
ちなみにですが、アニメ版は平成22年「文化庁メディア芸術祭大賞」を受賞しています。当時テレビアニメ初の受賞だそうです。
テレビ的制約を逆手に取った、豊かな表現力 テレビ作品初の大賞にふさわしい、実に豊かな表現力に満ちあふれた作品である。京都の景観を入念に取材した上で独特のデフォルメを施した空間とキャラクターの動きがある絵に、饒舌なモノローグを重ねて力のある映像を完成させている。…省略。
http://archive.j-mediaarts.jp/festival/2010/animation/
ぜひ文化庁の公式ページを覗いてみてください。知らなかった良作と出会えるチャンスかもしれませんよ!
http://archive.j-mediaarts.jp/festival/2010/animation/
文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品
著者 森見登美彦
奈良県生駒市出身。京都大学を卒業しています。
2003年、在学中に執筆した『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して、小説家デビュー。
2006年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞し、 第137回直木賞(2007年上期)候補、2007年第4回本屋大賞(2位)に選定されています。
作風
押井守さん好きなんです。ボーッとしてると、押井守と宮崎駿が自動的に出てくる。気を許すとそれが入ってくるので、後から読み返すと「うわっ、似てる」となるんです。」
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/森見登美彦
押井守と宮崎駿のエッセンスや世界観が本書『夜は短し歩けよ乙女』にも取り込まれているのでしょうか。
一方で自身の作風については下記のように語っています。
「ファンタジーは強引にまとめられるので何とか書けるが、現実の物事がいろいろ複雑に絡み合ったクライマックスは頭に浮かばず書けない」
「シリアスな小説を書く意味がよくわからない。シリアスなものは、怪談しか書けない。まして、ミステリーのように緻密なものは考えられない」
代表作
- 2003年 – 『太陽の塔』 – 第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞
- 2007年 – 『夜は短し歩けよ乙女』 – 第20回山本周五郎賞受賞
- 2010年 – 『ペンギン・ハイウェイ』 – 第31回日本SF大賞受賞
- 2014年 – 『聖なる怠け者の冒険』 – 第2回京都本大賞受賞
- 2017年 – 『夜行』 – 第7回広島本大賞受賞
- 2019年 – 『熱帯』 – 第6回高校生直木賞受賞


ほんのりとあらすじ

「私」は大学3回生。
バラ色のキャンパスライフを想像してのに、モテない、勉学も地面すれすれの低空飛行。現実は理想に程遠い。
そんな「私」は悪友の小津や自称神様の自由人である樋口に振り回されながら4つの並行世界で繰り広げられるちょっぴり不思議なできごとを体験すことになる。
「四畳半神話大系」とは

本書の主人公は「私」です。
大学三回生になるまで大して何にも打ち込んでこなかった学生です。現実でも同じような生活で時間を浪費してしまっている大学生は多いと思いますが…。
大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など…略。
『四畳半神話大系』 P97
さて、本書は『四畳半神話大系』というタイトルも関係しているのか、全体は4話で構成されていて、各話の冒頭で「私」はそれぞれ異なった選択をしますが、入学から始まる2年間という同じ時間の枠の物語が繰り返されます。
それぞれの異なる選択をおこなった結果、4つの並行世界が生まれ、最終話ではこれらの世界を旅することになります。
「四畳半恋ノ邪魔者」
第一話「四畳半恋ノ邪魔者」では、映画サークル「みそぎ」に入りその独裁体制に不満を感じていた。悪友の小津と共に先輩に反逆の狼煙を上げるが、結果としてサークルを追放され、二年間を棒に振ってしまいます。
「四畳半自虐的代理戦争」
第二話「四畳半自虐的代理戦争」では、酒の勢いもあり樋口と意気投合してしまった「私」はなぜか樋口の弟子となり、何の弟子なのかすら明らかにならずして最終的に歴代の先輩達の因縁の代理戦争に巻き込まれていき、二年間を無駄にしてしまいます。
「四畳半の甘い生活」
第三話「四畳半の甘い生活」では、理想の女性と文通を行うも小津のなりすましであり、結局小津の掌で踊らされたまま二年間を無駄に過ごしてしまいます。
「八十日間四畳半一周」
最終話の「八十日間四畳半一周」では先輩の誘いで図書館警察に所属し、一年半の時間がその活動で過ぎるが、最終的に名目だけの幹部に落ち、軽蔑されるようになってしまう。
やがて自宅の四畳半に引きこもるようになる。すると、ある日その四畳半の中に閉じ込められ、並行世界の旅が始まってしまいます。
小津という存在

どの章においても何らかの形で「私」に干渉してくるのが悪友「小津」。
野菜嫌いで即席ものばかり食べているから、なんだか月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚だ不気味だ。夜道で会えば、十人中八人が妖怪と間違う。
『四畳半神話大系』 P103
悪知恵が働き、何を考えているかわからない。プライベートな部分は謎に包まれている。そんな彼は本書のキーマンであり、語り手である「私」の対となる存在だと思います。
理想の薔薇色のキャンパスライフを求める「私」はどの並行世界でもことごとく失敗して後悔が描かれる一方、現状を楽しむ「小津」はどの並行世界でもリア充であり、まさに薔薇色のキャンパスライフを満喫するのです。
読み終えた感想

前述したように、本書は並行世界ものです。
毎回似たような始まり方、毎回同じような終わり方をします。
せっかく明石さんと結ばれたと思ったらその描写はあまりにもあっさりしていて、次の話ではまた時間が巻き戻ってるなんて。。
しかし読み進めてみると、作者の施した複雑な構成と複線が垣間見えてきました。
最後の四畳半を旅する話ではこれまで「私」がそれぞれの並行世界で選択したこと、選択しなかったことによる「微妙な差」が細かく提示されてきてゾクっとしました!
同じ時間を何度も見ているのに、退屈に感じないように共通する仕掛けや改変箇所などがコミカルに描かれています。(最後にならないとわかりませんが)
語り手の「私」がこれまでの世界の存在に気がつき、四畳半の閉鎖空間を打開していくラストシーンはほんとに気持ち良かったです。
おすすめポイント
- 生き生きしたキャラクター達
- ちょっと不思議な青春ストーリー
- 大学生活を考えさせられる
冒頭でも書きましたが、アニメと合わせて読んでみるのもいいと思います。内容も多少違いますし、しつこいようですがヒロインの明石さんが可愛いので…。