本日は、電撃文庫から出版されている「ミミズクと夜の王」という本について書こうかと思います。
表紙からしてちょっと不気味なんですが、安心してください。とてもハートフルです!いい大人も泣いちゃいます。
ちなみに本書の続編には5年後の話を描いた「毒吐姫と星の石」があります。こちらはまだ未読なので機会があれば読み終えてから記事にしたいと思っています。
本書を手に取ったきっかけ
確か2019年の10月頃だったか…
大学時代毎日一緒に過ごしていた親友がこちらでの仕事を退職し、地元に帰省してしまう直前に本の整理をするとのことだったのでいただきました。
その友人は文学部ですっごい小説が好きな人で、これまで数々の本をお勧めしてくれていたので「この人がくれる本ならきっと面白いにきまっているよね?」と思う私。
持ち帰ってすぐに読みました。
著者 紅玉いづき
石川県金沢市生まれ。金沢大学文学部卒業。
受賞時のペンネームは紅玉伊月(こうぎょく いづき)。
2006年、に本書『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞。
電撃文庫には珍しいストレートで童話的な作風が話題になった。
ペンネームは誕生石のルビーから。
代表作
- 進撃の巨人 果てに咲く薔薇シリーズ
- 悪魔の孤独と水銀糖の少女
- RPF レッドドラゴンシリーズ
- MAMA
- 雪蟷螂
- ミミズクと夜の王
この中でも『ミミズクと夜の王』『MAMA』『雪蟷螂』は人喰い三部作と称され、同一世界観に基づくとのことです。
独特な世界観にとても味があるのでシリーズ残り2冊もぜひ読んでみたい!
ほんのりとあらすじ
奴隷として働いていた少女が村から逃げてきて、どこか心を壊してしまった「ミミズク」と自称する少女と魔物の森を支配する「夜の王」と言われるフクロウの魔物が出会うことから物語は始まります。
少女ミミズクは自分を食べて(捕食)ほしいと夜の王フクロウに何度も頼み、夜の王はその要望を冷たく拒否する。しかし、ミミズクはそんな態度をとるフクロウに対して愛情を抱きはじめていく。
一方その頃、王国レッドアークでは魔物の住む森に攻め入りそこの支配者である夜の王を捕らえて処刑しようという計画が進められていた。
ざっくりこんな感じです。
読み終えてみた感想
結論から言います。
なんら難しいことはない。うるっときました…
幼女ミミズクと夜の王フクロウの成長物語です。
偶然の出会いから始まり、最初はいびつで不可解だった両者の関係がようやく徐々に打ち解けてきた時、魔物の王であるフクロウを退治しに攻めてきた王国レッドアークの兵士たちによって無理やり引き裂かれてしまう。
「行け、獣を称する娘。お前にはもう、ここにいる理由がない」
ミミズクと夜の王 P112
フクロウはあえてミミズクを突き放し、捕獲されてしまう。一方ミミズクは魔物に拉致された少女として保護され、やがて城下町で普通の人間としての人生を送り始めます。
エピローグ含め全9章のうち4章を消化したこのシーンを境に後半こそ本書の最大の魅力だと私は思います。
無事に保護された少女ミミズクは、初めて普通の人間らしい生活を営み始めます。商店街に買い物に行ったり、いろんな人と出会ったりして純粋に純粋に幸せな人生です。徐々にごく普通の少女のような人格へ成長していきます。
ただし、フクロウのことや、一緒に過ごした大切な時間の記憶を失っているんですけどね…
街の人々は、むしろ魔物に捕らえられていた怖い記憶を忘れることができたのはいいことなのかもしれないと考える中、ミミズクを救出したアン・デユークは思うのだった。
「ミミズクの、記憶がないのは幸せなことなのかな」…中略。「人はそんなに軽々しく、つらい過去を忘れてもいいのだろうか。たとえば、幸福っていうのはたくさんの涙や、苦しみの上で初めて輝きを増すんじゃないだろうか。人の強さってのはそういうものなんじゃ」
ミミズクと夜の王 P167-168
やがてミミズクの記憶はとあるきっかけで完全に蘇り、今の不自由ない幸せな生活を捨ててでもフクロウと一緒にいたい!と願い覚悟を決めていく…
記憶を取り戻す直前までのミミズクが街で新たな出会い、新たな経験をして成長していく姿が描かれるシーンについて純粋に愛おしく思えたし、このまま幸せに過ごしてほしいと心から考えさせられている私がいました。
それでも彼女は魔物の王であるフクロウと一緒にいたいと願い行動するでんですよね。
結局、幸せの価値観なんて人それぞれってことなんだなぁと思いましたねー!
読者の私たちは奴隷時代の彼女の辛い過去と比較した結果、情緒も安定して人間らしく成長してく彼女を見ながら幸せになってほしいって願いますよそりゃ、少なくとも私はそのように感情が動きました。
ただ、ミミズクにとっての本当の幸せはフクロウと過ごしたあの時間、あの瞬間だったというだけのこと。
そうしたミミズク本人の本当の気持ちに突き動かされ、クライマックスに向け大きく物語が動いていきます。
ミミズクの行動は、幸せの定義や真っ直ぐな愛は人の気持ちを動かすことができる!という大切なことを私に改めて教えてくれた気がしました。
ちなみに著者は高校生の頃にこの作品のプロットを作っていたそうです。
大学に入ったら、この物語を書こう。私が書く長編小説の、一番最初はこのお話にしよう、そう思いました。大学受験は苦しいこともありましたが、その度にそっとこう呟きました。「大したことじゃあないわ」
ミミズクと夜の王 あとがき P266
素敵な作品をありがとうございます。
こんな人におすすめ
- 泣ける物語を読みたい
- 読みやすい文章の本が良い
- サクサク読み進めたい
- 童話のようなお話に興味がある
「これ、ノナカは絶対気に入る思う」って言って私にこの本をくれた友人には感謝しかありません。ぜひ読んでみてくださいっ!